五日市社中の大イベント第二弾!!令和元年青梅大祭に参加しました。 産土神のご利益でしょうか、導かれるように話が進み、3月の「あきる野の奏で」に続いて五日市社中として大成功のイベントだったと思います。
青梅市勝沼町の居囃子舞台で、二日間にわたり延べ22時間(1320分間)音を切らさずご奉納させていただきました。延べ参加人数は180名を超え、怒涛のお囃子共演をやり遂げました。 参加者は4つの組にそれぞれが配置され、組ごとに90分のローテーションで演じた囃子は、なんとノンストップ。 どの組も音を止めずに次の組に渡しましたので、最後まで音が止まることが無かったようです。だからなに?って話ですが、笑えます。
平成24年12月、五日市中学校に伝統芸能部が創部され、部をバックアップするために学校区内13団体の囃子連で後援会が設立されました。五日市社中はその後援会組織が母体となっています。7年間の後援会活動を経て、加盟団体が絆を深め、満を持して今年1月、オール五日市の囃子連という機能を持った組織として発足しました。
組織体制も整えられて、このような一大イベントに臨むことができるようになったのも、地域の皆様のご理解とご協力があってこそと、心より感謝しております。
発足一連の流れを見ると「和を以て貴しと為す」という聖徳太子十七条憲法の言葉が当てはまります。この「和」というのは仲良くしなさいということではなく、派閥や党派に別れて意見の対立を深めるような事を行ってはいけません、和(やわらぐ)の状態を作って話し合いをしなさい、と言う意味だそうです。むしろ納得行くまで議論しろ、と言う事でもあるようです。これこそ日本人のDNAに刻まれてきた「和の心」です。「田舎ほど集団主義なんだべ!」なんて話が出たこともありますが、それは全く違う気がします。都会っ子は個人主義的で田舎っ子は集団主義的とか、欧米文化を個人主義の文化、日本文化を集団の文化などという論説を見ることもありますが、そもそも何処にでも個人主義的な者もいれば、集団主義的な者もいるわけで、人が集まり集団で行動する場合、主義というよりも何らかの理由と目的があるのです。
私は真っ先にEU(ヨーロッパ連合)設立とイメージが重なりました。 ヨーロッパの歴史は、長い間、争いが絶えず、それぞれの国が民族繁栄のために命をかけて戦ってきた歴史です。時が流れ、ヨーロッパだけでは解決できない時代が訪れ、「戦争に勝つ方法」よりも、「戦争を起こさない方法」について考える人々が、次第に増えていきました。
基軸になったのがフランスとドイツで、最初はECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)を設立しました。石炭と鉄鋼。この2つは戦争で兵器を造るために欠かせない産業で、この設立は戦争の火種を回避するためでもあったそうです。
その後、EEC(欧州経済共同体)やEuratom(欧州原子力共同体)ができました。石炭や鉄鋼だけでなく、経済全般で国境を取り払った共同市場を作り上げることを目的とした組織です。これらは成功を収めましたが、第4次中東戦争によって石油価格が高騰し、急激な物価上昇が起こりました。これを機にEUの前身となるEC(欧州共同体)が誕生したのです。
そして、ソビエト連邦崩壊やドイツの東西統一などがあり、新しい世界情勢に対応するために、ECの機能に加えて外交、内務という3つの柱を持ったEU(欧州連合)が発足しました。
五日市地区は、市町村合併を繰り返しながら、歴史と文化を誇りにアイデンティティを築いてきた地域です。ですから神社仏閣が多く、それに伴いその地区ごとの祭礼も多彩で、さまざまな郷土芸能が生まれました。
明治の時代より脈々と伝えられてきたお囃子も、時代の趨勢により五日市地区の神田囃子と増戸地区の重松囃子の団体が一つになり1984年「五日市町郷土芸能連盟」が発足しました。まさに日本はバブルの時代!経済と文化はシンクロしています。
そして、1995年五日市町と秋川市が合併しあきる野市が誕生します。それに伴い翌年、あきる野市郷土芸能連合会が発足し五日市町と秋川市の郷土芸能団体が合流します。時代はバブル崩壊で地域経済も低迷の時代です。それでもその頃はお囃子コンクールが盛んで、多くの団体が「うらほーが」精神でお囃子技術にこだわりを持って活動していた時代が2000年頃まで続きました。
しかし2000年を境にじわじわと少子高齢化問題が台頭してきます。お囃子の世界も「技術の向上」よりも、「絶やさずに繋げていくこと」について考える人々が、次第に増えてきました。
2010年には第1回葛西神田流囃子の集いが開催されました。今までになかった同流派の交流が始まります。時を同じくして上町囃子連は八王子祭囃子連合会に加盟します。囃子の世界もグローバルな時代に突入です。日本経済もいちじるしく国際化が進み、国際社会を生きる日本人を育成するため、「日本の伝統・文化理解教育」なるものが文科省により打ち出されます。その流れで2012年(平成24年)五日市中学校に伝統芸能部が創部され、あわせて五日市社中の母体となる五日市中学校伝統芸能部後援会が発足したわけです。
2019年、必要なプロセスを経て、またコンセンサスがそれなりにあってここまで来た感じがします。 集団主義なんてものではなく、少子高齢化の時代、地域の制限を取り払い、加盟団体同士協力し合って、郷土芸能(特に地域に伝わる神田囃子)の良好な保存と発展、そしてなによりも後継者育成のための協力関係を築く、といった効果を目的として発足したわけです。五日市社中は、交流や親睦だけでなく、ユーロ通貨と同じく、共に同じ囃子を演じ、人材を共有し、伝統芸能部を通じて共に後継者を育てる、という一大プロジェクトとして、私たちのお囃子文化を価値あるものにするために結成されたのです。近隣の山車・囃子文化で培われた地域と、肩を並べて交流ができるように、こうした協力体制が必要であるとの認識の上に、活動を続けていく五日市社中だと思っています。
もちろん、価値観が100%揃うことなどありません。それぞれの事情で、加盟する団体にも個人にも強弱があります。現在EUは英国の離脱交渉という未知の領域に踏み込み、戦後脈々と続いてきた欧州統合プロジェクトも一大転換期を迎えています。さて、私たち「五日市社中」の未来はどうなるのでしょう・・。まぁ青梅大祭が楽しかったので、難しいことはどうでもいいですけどね。
このような素晴らしい機会を作ってくださった青梅囃粋會の皆様、青梅大祭実行委員会関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
M.S